「親が安心して暮らせる老人ホームを探したい!」必要な費用と捻出法、希望に適った施設選びのポイント
目次)
1. 在宅介護と施設介護のメリット・デメリット
2. 高齢者施設・住宅の種類と概要
・特別養護老人ホーム
・介護付有料老人ホーム
3. 介護施設を利用するにはいくら必要か?
4. 自分自身のために今からできる準備と親の介護のために今からできる準備
・自分の老後のためにつみたてNISAやiDeCoを活用
・親の介護のために、無理のない介護の範囲を家族全員で確認し共有
5. ぴったり合った有料老人ホームの選び方
前回紹介した在宅介護は、家族も介護を行うけど、介護のプロにサポートをしてもらい、負担を軽くしていく介護方式だったニャ!
でも、在宅介護には限界もある、っていう話だったよね?
2019年に行った厚生労働省の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の61.1%は高齢者だけで生活しているニャ。その内訳は独居が28.8%、老老夫婦世帯が32.3%ニャ。
介護してくれる家族がいない人が多いってことだね。
そうニャ。だから介護施設へ入居する人が増えているニャ。今回はどんな種類の高齢者施設があるのか、費用、選び方、今からできる準備法などを見ていくニャ!
在宅介護と施設介護 メリット・デメリット
まずは、在宅介護と施設介護、それぞれのメリット・デメリットを押さえておきましょう。
どっちもメリット、デメリットがあるから、介護が必要になったら、在宅介護か施設介護、どちらを選択するのか検討しておくニャ。
高齢者施設・住宅の種類と概要
高齢者施設・住宅には、さまざまな類型があるニャ。中には自立している時から入居し、最期まで暮らせるところもあるけど、今回は要介護認定を受けた人が、介護を受けて生活できる介護施設にフォーカスするニャン。
入居すれば最期まで安心して介護を受けて暮らせる「終のすみか」となる施設の代表は、
「特別養護老人ホーム(介護保険法では介護老人福祉施設。以下、特養)」と「介護付有料老人ホーム」です。
「特養」の特徴は、
・税金などで建てられ、前払金という初期費用のかからない公的な施設。
・入所の申し込みは原則要介護3以上となっており、要介護度が高くないと入れない。
・費用が安く、入所できれば最期まで暮らせることから人気が高い。
・ただし、体調悪化により、長期的な医療行為・入院が必要になると退去も。
・地域によってはたくさんの待機者がいて、すぐに入所できない場合もある。
・1つベッドが空くと、要介護度が高い・介護する家族がいない人が優先される。
などです。
特養待機期間に、「老健(介護老人保健施設)」に一時的に入所する人もいるニャ。
老健は、要介護1から申し込めるニャ。原則3ヶ月間、在宅復帰を目指して生活リハビリを受けられる公的施設で、特養より入所しやすいからニャン。
民間の「介護付有料老人ホーム」は、要支援1から入居できます。施設は毎年増加しており、施設ごとに特徴があります。
例えば、
・金額は高いが手厚い介護を受けられる施設
・食事に力を入れている施設
・リハビリに力を入れている施設
など、自分に合ったところを選べます。また、認知症で身の回りのことができる要支援2以上の人は「グループホーム」も選択肢となります。5~9名のアットホームな雰囲気で、落ち着いて生活できる施設です。
「住宅型有料老人ホーム」といって、介護は外付けの老人ホームも増えています。
外付け?
「住宅型有料老人ホーム」は入居しただけでは介護サービスは受けられなくて、自宅にいるときと同じく自分に必要な介護サービスを別途契約して使うニャ。
要介護度が低いうちは介護付有料老人ホームより費用が安く済みますが、重度になると、介護費用が高くなる、十分な介護が受けられず住み替えが必要になる場合もありますので、施設ごとに十分確認しましょう。
「サービス付き高齢者向け住宅」という見守りと生活相談サービスのついた高齢者住宅が急増してるニャ。これも介護サービスは外付けニャ。
老人ホームを利用するにはいくら必要?
介護付有料老人ホームの費用は前払金と月額費用の二本立てです。
前払金とは、想定居住期間分の家賃の前払いで、施設ごとに設定されています。年齢により想定居住期間を変えている施設もあります。65歳など若い時から入居する場合は高く、90歳を超えてから入居する場合は安いといった数段階制です。
しかし、実際は前払金のない施設が半数以上で、その場合は毎月家賃を支払うため、月額費用は高くなります。
一般的に、東京都内など地価の高いエリアで、設備が充実し、不動産価値が高い施設は高額ニャ。前払金は0~数千万円、月額費用は、家賃、管理費、食費といった居住費で15~30万円くらいニャ。その他に、要介護度に応じた介護費用がかかるニャ。家賃が高額で月払いの場合は80万円を超えるケースもあるニャ!
は、80万円!?
これは高額の場合ニャ。自分が払える範囲の施設を選ぶのが大事ニャ!
いろんな条件で金額が変わるから、「介護施設に入居したらいくら必要?」っていうのは一概には言えなさそうだね。
要介護度と、居住年数、そして施設ごとに費用が異なるから、入居に必要な金額は一人ひとり異なるニャ。
ここで一例として、Aさんが介護付有料老人ホームに10年間入居した場合を例に計算してみます。
※厚生労働省完全生命表を参考に、83歳女性の平均余命約10年を使って計算しています。
・前払金:300万円
・月額費用:20万円/月
・その他費用:5万円/月(介護費用・医療費・雑費)
とすると、10年間の費用総額は、
300万円+25万円×12ヶ月×10年=3,300万円
です。
実際は前払金なしや、数十万円から数千万円、また月額費用が高額な施設もあるから、各施設のHPで利用料金を確認の上、計算するニャ。
なお、生命保険文化センターの調査結果では、介護期間の平均は4年7ヶ月(55ヶ月)です。
しかし、10年以上の人も14.4%います。親の年齢、身体状況などを考慮し試算することが必要です。
今ある資産で計算すると…
「親の介護は親の資金で」これが基本です。その資産を使って最期まで生活できる施設を選んでいくシミュレーションをしてみましょう。上記83歳のAさんが93歳で死亡するまで介護付有料老人ホームで生活した場合で、保有資産2,000万円、年金収入を12万円として計算します。
前払金は300万円。月額費用と介護費用・医療費・雑費などを合わせて25万円かかるとすると、年金だけでは13万円足りないので、毎月保有資産2,000万円から取り崩していきます。
入居期間10年とすると、93歳で死亡した時の資産残高は、
2,000万円-300万円-(25万円ー12万円)×12ヶ月×10年=140万円
です。
介護施設はお金がかかるイメージだけど、年金と十分な備えがあれば安心だね!
もし、要介護3になり特養に入所できれば月額費用は下がるので、残高は増えるニャ。いずれにせよ、自宅を保有し続けた場合は固定資産税や維持費なども必要ニャ。自宅をどうするかは、家族で検討が必要ニャ。
自分自身のために今からできる準備と親の介護のために今からできる準備
自分が要介護になるか、ならないかは誰にもわかりませんが、老後資金が多ければ老後生活の選択肢を広げることにつながりますので、なるべく長く働き、貯蓄を増やしておきましょう。
前に紹介したつみたてNISAや、iDeCoは1日でも早くスタートするニャ!
▼参考記事
20、30代の利用者が急増中!税金がかからなくなる制度「NISA」って何?
どれくらい税金が減る?老後資金作りにiDeCo(イデコ)がおすすめな理由を解説!
これ以外にも資金的に余裕があれば、投資信託などを利用し、リスクを抑えた分散投資を行うのもいいでしょう。生活費で残った分を投資に回すのではなく、毎月定額を投資するしくみを作り、余った分で生活する「お金の貯まる生活体質」の確立が効果的です。また、介護の不安が強い場合は、民間の介護保険を利用するのも一手です。
納得できる介護保険に加入すれば老後生活への安心感が広がるでしょう。
「お金の貯まる生活体質」かぁ。コンビニでついつい新商品を買っちゃう癖も改めないと…。
もう1つ大切なことは、親に介護が必要になったらどこまで介護生活をサポートしていけるか、親や兄弟姉妹と腹を割って話し合っておくことニャ。
ぴったり合った有料老人ホームの選び方
ところで、老人ホームって全国にどのくらいあるか知ってるかニャ?
えーーー?全然想像つかないなぁ。
有料老人ホームは全国で約16,000以上あると言われているニャ。
そ、そんなに!?そんなに多いとぴったり合った施設を探すのも難しそう…。
有料老人ホーム紹介業者もあるけど、勧められるまま全てを鵜吞みにしないで、自分で確認し見極めることが必要ニャ。
まずは、親の資金ではどの位の価格帯の施設なら入居可能かを割り出し、親や家族の希望要件を書き出し、優先順位を付けます。
例えば、
・介護体制が充実したところ
・食事がおいしいところ
・静かな環境のところ
など。施設に入居したら預けっぱなしにせず、心のケアは家族が行っていくと覚悟し、なるべく主に介護を行う家族が通いやすい施設を選ぶのが賢明です。
私のパパは食事がおいしいところが良さそうだなぁ。
候補となりそうな施設をいくつかピックアップしたら、アポを取り、見学します。
見学中は五感をフルに活用し、
・嫌な臭いはしないか?
・清掃は行き届いているか?
・入居者や職員は生き生きとしていて和やかか?
・雰囲気が暖かいか?
などを確認します。気になる点があれば質問し、それに的確な回答を得られるかも含めて確認しましょう。候補施設となりそうなら、体験入居に進みます。
体験入居では、親本人が気に入るかどうかを確認します。それと同時に、入居希望者には医療ケアが必要な方もいらっしゃることから、施設側も主にそのあたりをチェックしています。双方がOKなら入居契約に進みます。体験入居が必須の施設もあります。
施設選びは、100%満足のいく施設はないことを理解した上で、経済性にかなったところで、入居者も介護職員も生き生きしていて、雰囲気の良さそうなところを選ぶのが良いニャ。
もちろん、親の介護の問題が先だけど、自分の時のことを考えて今からちゃんと老後費用の準備をしなきゃって改めて考えさせられたよ。
親の介護についても親だけに任せないで一緒に考えていくことが大事だね!
お互いの両親がいつどうなるかわからないから、兄弟姉妹含めて話し合っておこう!
執筆:岡本典子(ファイナンシャルプランナー)
FPリフレッシュ代表。シニアライフを安心して暮らせる高齢者施設・住宅への住み替えコンサルに特化した独立系ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。セミナー講師・講演や執筆、監修も行う。著書に『イザ!というとき困らないための 親の介護と自分の老後 ガイドブック』(ビジネス教育出版社)、『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』(日本実業出版社)がある。